社会人として毎日働いていながらも、自分のキャリアと将来には漠然とした不安を抱くものです。
私も就職氷河期できちんと就活しなかったことで社会人としてのスタートにつまづき、その遅れを挽回すべく20代はキャリアアップに必死でした。
見えない将来に対して不安になる気持ちは大変よくわかります。
何かしなければならないという思いに駆られて、将来の糧として資格取得に走る人もいるでしょう。
しかし資格取得には多大な時間と労力を必要とします。
その資格が本当にキャリアアップにつながるかはきちんと考えた方が良いでしょう。
キャリアアップを信じて資格取得に励んだとしても、単なる自己満足に終わってしまい、仕事に全く生かされていないケースも多いです。
その結果、転職も出世もできないというオチになりかねません。
資格取得に費やすお金と時間はバカにならない
弁護士や会計士などの超難関試験は別として、キャリアアップにつながる代表的な資格としては、英語分野であればTOEICや英検、IT系ならITパスポート試験や情報処理技術者能力認定試験などがあります。
事務系でも、簿記検定から秘書検定などたくさんの資格があります。
これらの資格は受験者数も多く、実務で役立つように資格試験の内容が常に改善されてきた経緯があるので、資格取得することで能力は高まります。
しかし、現在の自分の仕事とその資格内容がリンクしていない場合は、資格取得に費やしたお金や時間、労力が無駄になってしまう可能性も大きいのです。
「無駄な努力なんてこの世にないだろう」という意見もあるでしょう。
たしかに資格で得た能力がその後の人生で活用できたり、資格取得を通して自分に自信がつくといったことはあるでしょう。
努力をすると何らかの形でプラスの面が出てくるものです。
しかし費やしたお金・時間・労力への投資対効果を考えると疑問です。
「何かスキルを身に付けたい」「キャリアアップになるような資格がほしい」という気持ちはわかりますが、陥りがちなのは資格を取るのが、目的となってしまうことです。
大事なのは資格を取得した後です。
キャリアアップや年収アップを目的とするなら、極力回り道を避けて、まっすぐ直線的に進むべきです。
特に30代までにある程度の結果を出すには、時間はそうたくさんありません。
TOEICで800点取っても仕事で使わなければ意味がない
いまの自分がいる業界で、その後も仕事していこうと考えているなら、どの資格を取得するのが有効かを検討しましょう。
英語を全く使わない環境にいるのなら、英語をいくら学習してもキャリアアップにはつながりません。
TOEICで800点以上とれたら、職場の人からはその努力と能力に対して評価を得られるでしょう。
しかし仕事で英語を使わないのだから、キャリアにはプラスにはなりません。
むしろ目の前の仕事に対して、常にベストを尽くした方が、評価され、キャリアアップにつながります。
社会人になったら、何よりも求められるのは結果ですから、とくに資格が求められていない職場では、資格取得になんか時間をかけずに、目の前の仕事に集中した方が良いでしょう。
営業や起業している人の場合
とりわけ営業の仕事をしている人は、資格取得よりも営業スキルを磨いた方が得策です。
学生や若手社員の中には、「営業なんか誰だってできる仕事だ」「スキルがない人がやるもの」と思っている人がいますが、これは大きな勘違いです。
営業スキルさえあれば、どの業種のどの会社でもやっていけます。
歩合制であれば、事務系の社員よりも高い給料を得ることができます。
営業には地道な努力と行動力、体力、機転など必要で、それは大変な仕事ですが、これを習慣化して、結果を出していくことで営業スキルを身に付けることができれば、手軽な資格よりも、ずっとずっとあなたの強い味方になってくれます。
また独立起業している人も同様です。
英語を勉強している暇があれば、売上アップにつながるような施策を、思いつく限り、行動に移していった方がよい。
よほど結果に跳ね返ってくるはずです。
資格勉強は簡易な自己実現にすぎない
実は資格勉強は、割と簡易な自己実現です。
決められた試験範囲を勉強しておけば、それだけ結果が出る世界ですから。
そのため仕事で結果が出ずに悩んでいる人や、将来に対して不安を感じるあまり思考停止状態に陥ってしまった人が、手を出してしまうということがあります。
仕事では努力がすぐに結果に反映されるほど単純な世界ではないので、すぐに結果を期待する人は、労力を出し惜しみします。
そして資格取得に逃げるのです。
資格取得を繰り返す人を資格コレクターなんて揶揄されることがありますが、そうした本質からズレた行動を暗に批判されているのです。
資格をいくら取得したところで、必ずしもキャリアアップや年収アップにはつながりません。
下記記事でも触れていますが、 医師の日野原重明氏は全国の小学校で「いのちの授業」を行っていました。
そこで小学生から「いのちってなんでしょう?」と聞かれた際に「いのちとは、君たちの持っている時間です」と説明したといいます。
私たちの時間は有限です。
何に時間を費やすべきなのか、よく考えたいですね。