週末5分間 英語クラブ byコツログ

世界のサッカーニュースを英語で学ぶブログです。毎週末更新します。たった5分間ですが内容の濃い英語学習にしましょう。

【書評】『キリンビール高知支店の奇跡』 結局営業は努力した者が勝つということなのね

2016年4月刊行の書籍ですが、いまでも店頭の新書コーナーでは目立つところへ置かれていますね。
2017年8月現在のAmazonのランキングでは書籍全体で1140位、講談社+α新書では3位です。
講談社+α新書はかなりの数の書籍が出ていますから、その中で刊行後、1年以上たってもいまだに3位というのは、かなりヒットしていますね。

では、なぜそれだけ売れたのか。
地方の成績不振の支店が、劇的な数字回復を見せたということで営業ノウハウが詰まった1冊だと思われたのでしょう。

ただね、読んでみての感想ですが、特別な営業ノウハウが書かれているとは期待しない方が良いです。
営業の工夫した点については詳細が記載されていますが、正直に言ってそこまで革新的な内容ではないです。
基本的に地道な営業を強化しただけです。
やるべきことを愚直なまでに実施しただけなのです

Amazonの「内容紹介」部分に記載されてもいますが、著者が実施した営業改革は主に以下です。

【著者の改革例】
1.会議を廃止
2.内勤の女性社員を営業に回す
3.本社から下りてくる施策を無視
4.高知限定広告を打つ
5.「ラガーの味を元に戻すべき」と本社に進言

 

これをちょっと整理してみると、

1.会議を廃止
2.内勤の女性社員を営業に回す

 

この「1.」「2.」は単純に営業強化です。
無駄な会議や内勤に割いている時間があれば、1店でも外回りの営業を増やす。そうすることによって、キリンビールを優先的に取り扱ってもらうようにするということです。

書籍ではやんわりと書かれていますが、高知支店のスタッフは毎日残業し、働きまくったようです。読んでいて「今の時代ではこれはブラックなのでは?」とそわそわしました。

そして次の、

3.本社から下りてくる施策を無視

 

についても、選択と集中による営業強化です。
本社の企画部から全国の支店へ様々な営業支援情報や指示が飛んでくるのですが、必ずしもこれらの指示が高知支店の置かれた状況で効果的とは限らない。

そのため余計なことをするよりは、1店でも多く、外回りの営業を増やした方が効果的だと判断しています。

次の、

4.高知限定広告を打つ

 

ですが、これはちょっと面白い。
実はキリンラガービールの一人当たりの消費量が、全国で高知が一番だったようです。

そして高知県民は何でも「一番」が好きな県民性があった。
そこで「高知が、いちばん。」というキャッチフレーズで、キリンラガービールがそれだけ飲まれているということを大々的にアピールしたのです。

これが高知県民にはささったようで、キリンラガービールのPRにとても効果的だったようです。

とは言っても、各地域に合わせた販売手法というのは、別に目新しい営業手法ではありません。むしろどの企業でも多かれ、少なかれ実施しています。

けれども本当に地域に応じた営業になっているのか、効果的に実施しているのかというPDCAの面倒な作業を著者は人並み外れた行動力で実践していきます

そして最後の、

5.「ラガーの味を元に戻すべき」と本社に進言

 

ですが、これは商品力強化ですね。
営業とは切り離された部分です。

実はキリンがアサヒビールにビールのシェア争いで負けてしまってから、1990年代後半にラガービールの味をアサヒのスーパードライ寄りに変更したところ、これが改悪となってしまい、さらにお客さんからの評価を落としてしまったことがありました。

著者は、お客さんのダイレクトな声を受けて、「ラガーの味を元に戻すべき」と本社に進言します。当初は本社はかたくなにこれを拒否しました。

本社では多大なコストをかけて、マーケティングを行い、商品改良テストを経て、社内の何重もの決裁を通過させて、ようやく商品化したわけですから。

それでも著者は、というか高知支店のスタッフは、本社へキリンラガービールの味を元に戻してほしいと痛切に訴え、社長が支店に訪れた際も、直訴しました

結局、これがきっかけとなって、その後、キリンラガービールの味は改良され、売上アップにつながっていきます。

量が質に転化する

営業マンであれば、売上成績が全然伸びず、悩んでいる人も多いでしょう。
そうした方が本書を読むと、答えが見つかるかもしれません。

ただその答えは、ある意味残酷な内容です
それは結局営業とは、どれだけ行動したか、愚直なまでの努力をしたか、が結果に反映されるという事実が書かれているからです。

外回り件数をとにかく増やせば、営業成績は上がってくるのです
おそらく営業ノウハウ本を探している人は、地味な努力ではなく、もっとスマートで効果的な営業手法を探しているケースが多いでしょう。そうした淡い期待を本書はズバッと裏切ってきます。

著者は管理職としても、部下に自分の考えを伝える時は、伝わるまで、それこそ1000回も繰り返したようです。とにかく粘ると効果が出てくる。諦めない人間が最後に勝つ、ということでしょうか。

別例ですが、サイバーエージェント社長の藤田氏も、大学卒業後に入社した人材派遣会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア)で営業部に配属され、努力しまくったようです。

新入社員なので仕事のノウハウはないものの、休日含めてとにかく働きまくったということです。そしてその過程で量が質に転化する感覚を経験したとのこと。やりながらコツを覚えるというのは確かにありますよね。

努力も続ければ快楽に変わる

結果が出ないで悩んでいる世の中の営業マンは、現実を受け入れるためにも本書を読むべきかもしれません。
やはり結果を出すにはまずは努力が必要だという現実を。

そして著者が言うには、地道な営業活動は最初は大変だけれども、効果が出てくると徐々に楽しくなり、最後はほとんど苦にならなくなるそうです。

ここらへん、学生時代の勉強と同じですね。状況を改善するには、どこかで努力は必要になる。うーん、我々も目の前の仕事を頑張りましょう……!