週末5分間 英語クラブ byコツログ

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【書評】ひふみ投信・藤野英人氏が「お金よりも大切にしていること」は何か

『投資家が「お金」よりも大切にしていること』をちょうど今朝の通勤電車で読み終えました。

本書の著者は、いま話題の投資信託「ひふみ投信」のカリスマファンドマネジャー・藤野英人氏です。

「ひふみ投信」は、2015年に格付投資情報センターが選定するR&Iファンド大賞にも選出された注目のファンドです。

2017年2月に放送されたテレビ東京「カンブリア宮殿」でひふみ投信と藤野氏について特集されたので、この放送を観てひふみ投信や藤野氏を知ったという人も多いのではないでしょうか。

私も藤野氏のインタビューなどは読んだことはあっても、藤野氏の著書をこれまで読んだことがなかったので、興味があり読んでみました。

しかし、そもそも私はタイトルにあるような「お金よりも大切なこと」のようなきれいごとを言う人って信じないようにしています。ポジショントークに終始して本音を言っていない可能性の方が高いからです。

まだ「お金が一番大事だ。お金があれば愛だって買えるんだ」ぐらい言ってくれた方が、その人の話を聞く気になれます。

また私は「ひふみ投信」のようなアクティブファンドも投資方針として選択肢から外しています。アクティブファンドのほとんどはインデックスファンドよりパフォーマンスが低いという統計結果が出ているからです。

そのため本書に対して興味はありながらも、一方で疑いながら読み進めました。

成長する会社に投資する

読み終えた結果、藤野氏が言う「お金よりも大切にしていること」とは、目先の決算よりも将来のビジョンを大切にしている企業や経営者を投資対象に選んでいるということだと分かりました。

ただ、本書は株式投資における技術的な知見はほとんど記載されていません。

その代わりに藤野氏が投資対象を選ぶ際の本質的な基準が明らかにされています。それは「成長する会社に投資する」ということです。

藤野氏のいう「成長する会社」とは利益を上げている会社のことです。「そりゃそうだろう」とツッコミたくなりますが、同氏は「株式市場のすてきなところは、利益を上がればそれに連動して株価も必ず上がるところだ」と力説します。

この考え方は玄人投資家にとっては逆に新しいです。なぜなら株式市場はたくさんのプレーヤーが様々な思惑で参加しており、経験がある投資家であれば、そんな単純な理屈で株価が上下しないだろうと考えてる人も多いからです。

しかし藤野氏は「長期的に見れば、利益と株価の高下は完全に一致する」と言い切っています。ファンドマネージャーとして25年超の経験を持つ藤野氏の言葉だけに、一周回ってその結論に行きついたのかと思わせるものがあります。

お金よりも大切なこととは何か

また藤野氏は長期的に成長する会社は、ビジョンのある会社だと言います。1990年代、ソニーが自分たちの技術の高さに酔っているときに、マイクロソフトやアップルは、技術より先にある将来のIT社会を想像しながら、製品を創造してきました。

その結果、ソニーの成長は止まってしまい、この20年間でマイクロソフトやアップルは大躍進したのです。

繰り返しになりますが、藤野氏のいう「お金よりも大切なこと」とは、目先の決算にこだわるのではなく、世の中を良くしていこうという企業の姿勢が第一で、利益や売上はその結果ついてくるという意味なのです。

サラサラと読みやすい本

ところで藤野氏は本業の一方で、明治大学の兼任講師として16年間教壇に立っているとのことです。私がいま明治大学の学生だったらぜひ授業を受けてみたいところですが、本書ではその明治大学の学生から寄せられた「お金に対するネガティブなイメージ」を例にあげて「お金とは何か」を説明しています。そういう意味で本書は投資初心者や学生を想定して執筆されています。

おそらく、藤野氏のファンドマネージャーとして25年間は、「カネの話は汚い」、「金儲けは悪だ」と思っている人の偏見との闘いだったのでしょう。藤野氏にとって執筆や講師活動はこうしたお金に対する偏見を是正したいという思いが動機になっているようです。

本書を読むと、藤野氏が真面目かつ誠実な人柄であることがわかります。またアクティブファンドのいちマネージャーがどのような思考で投資をしているのかが理解できるだけでも貴重な情報です。文体や内容も易しいので、サラサラと読めるので一読をオススメします。

ただしひふみ投信に投資するかといったら……

ただし、それでも私は「ひふみ投信」のようなアクティブファンドには投資することはないだろうなあ。藤野氏がいくら優秀でも、人間であれば常に結果を出し続けるのは不可能だし、様々な統計を見てもこれまでも勝ち続けたアクティブファンドなど存在しないからです

統計結果と藤野氏のどちらを信じるかと言ったら私は統計結果を信じます。

またアクティブファンドは必要経費である信託報酬等がインデックスファンドに比べて割高になってしいます。インデックスファンドは日経平均株価やTOPIX(日本)のような平均株価指数(インデックス)と同じ値動きを目指すだけのファンドなので信託報酬が低く済みます。

ただフォローしておくと、ひふみ投信の購入時の手数料は無料でアクティブファンドの中では良心的です。信託報酬の料率は、純資産総額に対して年1.0584%(税抜0.98%)なので、インデックスファンドの0.2%前後の水準と比べると高いですが、それでも多くの投資家にとって買いやすい商品になっていると思います。