保育士の給料が低い理由を「誰でもできる仕事だから」とホリエモンがツイートしたことで炎上しましたね。
ホリエモンのコメントは、断定と極論が多いので炎上しやすいのですが、今回についていえば意図するところは決して的外れではありません。
なぜなら仕事の報酬は、「専門性」と「拡張性」で決まるからです。
「専門性」とは、その職業がいかに専門的であるかを示すものです。そういう意味では、難関資格で高収入が約束される弁護士や医師に比べると、保育士はなりやすい職業であることは間違いありません。
専門性が低ければ低いほど、経験のない素人でも仕事することが可能になるので、人を雇う経営者の立場からすると、高い給料を提示しなくても人が集まりやすくなります。
一方「拡張性」とは、仕事の成果であるアウトプットを拡大していけるかどうか。
たとえば作家でいえば、もし1冊だけでもベストセラーを執筆できたら、あとは印刷所が本を刷って、書店が売りさばくだけなので、寝ていても銀行口座に出版社からの印税が振り込まれてくるようになります。
日本国内だけでなく、翻訳されて海外でも販売されるようになったら、印税はさらに膨れ上がっていきます。このように仕事としてのアウトプットを大量生産できること、これが拡張性です。
そして最も収益性が高いのは、専門性と拡張性を兼ね揃えた分野になります。
特殊な技術を必要とする工業製品を独占的に世界中に販売することができれば、価格も自分たちで自由に設定できるので、莫大な収入を得ることができます。
保育士は専門性・拡張性とも低いのが現実
保育士に話を戻すと、専門性・拡張性という意味では保育士はどちらも低い職業の1つであると言えます。
実は保育士試験は合格率10~20%台の国家試験なので、決して簡単ではないのですが、それでも弁護士や医師になるよりはずっと競争が低くずっと簡単です。
さらに保育士は一人当たりの面倒を見ることができる子どもの数は限られてしまいます。安全などを配慮するとどんなに経験豊富なベテランの保育士であっても、一人で100人の子どもを見ることはできません。
そうなると仕事としての報酬はすぐに上限に達してしまいます。いくら経験を重ねたところで、面倒を見ることのできる子どもの数は限られているのです。
弁護士や医師も同じように拡張性はありません。専門性が高いため平均年収は高めになっていますが、実はそれほど給料に伸びしろはありません。どんなに名医でも、1日に診療できる人数には限界があるし、診療報酬も国から定められているからです。
それでも難関資格で参入障壁が高いので、保育士と比べて高い報酬を得ることができるんですね。
保育士は世の中に必要とされる仕事
ただし十分な報酬が得られない労働環境で一生懸命がんばっている保育士さんもたくさんいるなかで、「誰でもできる仕事だから給料が低いんだよ」なんてホテル暮らしの人間から上から目線で発信されたら、それは腹が立つというものです。
保育士がいないと共働き家庭は、仕事に行けなくなりますし、そうなると日本経済はストップしてしまいます。専門性の高低にかかわらず、世の中には必要とされる仕事というものがあり、保育士はその1つなのです。そのため行政でどのように収入補助ができるか議論になっているのです。