臭うぜ、ぷんぷん臭う。ブラック企業臭が。
この提携は小学館にとってはよい提携だろう。出版社が苦手とするネットマーケティングのノウハウを得られる良い機会となるからだ。
一方で、DeNAがなぜ「MERY」をまた再開したいと考えたのか理解に苦しむ。
他に儲かるネタが乏しくなってきている中、過去にキュレーションメディアが単月黒字化した成功体験が、この決断を後押ししたのだろうか。
あれは成功体験というよりは、黒歴史だったんだけどね。
以前のビジネスモデルは通用しないよね……?
でもね、1本の記事を企画、編集、校閲まできちんとしていたら、まあコストに見合わない。
以前のMERYのビジネスモデルは、おおよそプロとは言えないスキルのネット乞食化したWebライターが、小遣いの足しに仕事を受注をして、記事を粗製濫造し、なおかつSEO対策(Google検索で上位に表示されるように策を講じる)によって、ページビューを力技でアップさせ、広告収入につなげるという方法だった。
とにかく大量に記事をつくり、それを検索上位に表示させることで成り立つビジネスモデルだったが、編集や校閲といった作業を給料の高い小学館の編集者の労働力に頼るのならば、コストと時間がかかるので、以前と同様の手法は難しくなる。
共同会社設立は大手企業がよく使う「ずるい手」
そこでキーになるのが、新会社の設立だ。
新会社を共同で設立するのは、実は企業にとってもとても都合が良い。
なぜなら責任の所在を半分以下の曖昧な状態にできるので、仮に事業が失敗しても直接被害を被らないし、会社をたたみやすい。
また人件費も安くすむ。なぜなら給与体系を親会社と別にできるからだ。
これは大手企業がよく使う手段でもある。新聞社の出版部門が事業拡大したという理由で、会社化することがある。「●●新聞出版社」というように。
親会社の高い給料体系から新会社の安い給料体系へ
新聞社の社員は「オレ、なんで新聞社に入社したのに書籍なんて作っているんだろう?」と疑問を抱いているうちはいいが、出版部門が新会社になった途端に、これまで新聞社の高い給料体系から低いひくーい給与体系に強制的に変更されてしまう。
中には最初は親会社から出向という形で、給与体系は守られるケースもあるが、それも時間の経過とともに出向から移籍となり、新会社の体制に組み込まれていくことになる。
DeNAは歴史も浅くベンチャー発進のIT企業なので小学館ほどしがらみに苦しくことはないが、それでも派遣会社にエンジニアの新規求人を出していたようだ。
失敗したら派遣社員を切れば問題なし
「正社員ではなく派遣なので、ダメだったらいつでも切れるようにしてるのだろう」というのはDeNAの立場で考えるとすんなり理解できる。
DeNAや小学館にしても、事業が成功すれば、決算報告時のプラス材料になるだけでなく、将来の事業拡大など投資として大きな成果が得られる一方で、たとえ失敗しても大きな痛手はない。会社を解体して派遣社員を解雇すれば済むだけだ。
小学館とすれば、こうしたネット事業を社内で始めようとしたら、デジタルにヒステリー反応を起こす社内の古株社員たちの強い抵抗にあって、なかなかスムーズにことが進まないし、なにより儲かるかどうかわからない事業に対して高い人件費を払うことはできない。
であれば、新会社を設立して新たに派遣社員を雇ったり、DeNAから若い社員を送り込んでもらう方がだんぜん楽だ。小学館の経営としては、斜陽産業である出版事業以外に何とか光を見出さなければならないから、体力のあるうちにデジタル関連事業に手当たり次第に投資したいと考えている可能性がある。
これは新会社が設立前にブラック確定か
そうなると新会社はある程度のクオリティが求められる記事を大量に作成しなければならない一方で、当然黒字化を求められる。
すると低収入でありながら長時間労働が約束され、雇用の安定もされないまま、まさにブラック企業と化してしまう危険がある。
いや私の妄想で済めば良いのだか。