あなたはこの事実を知っているだろうか。
海外の複数のWebサイトやスマホアプリで日本の多くの人気マンガが無料で読み放題なのだ。
英語や中国語に翻訳された『HUNTER×HUNTER』や『NARUTO -ナルト-』『ONE PIECE』などが全巻無料で読めてしまう。
上記画像はあるアプリで全話無料で公開されている『HUNTER×HUNTER』を私がスクリーンショットしたものだ。
このアプリを教えてくれた私の友人は英語の学習と趣味を兼ねて、これらのマンガを読みまくっていた。
本人はこのアプリを高く評価しており、違法だという認識はなかった。きちんと海外の企業が権利を買い取って、サイトで配信しているのだろうと思っていたのだ。
集英社に問い合わせてみたところ……
「残念ながらこのアプリは違法だね」と友人には伝えておいたが、読む側は罪には問われにくい。
しかしこの海外業者は完全に違法である。無料でコンテンツを提供するなど、出版社が許すわけはない。
念のため、私は集英社の「ライツ事業部海外出版課」へ連絡してみた。
以下に、そのやり取りをまとめてみる。
集英社:いえ、そのようなアプリは存じていません。弊社から許諾は一切していないです。
私:ということは違法なんでしょうか。
集英社:そうなると思います。
私:このアプリ以外にも海外のWebサイトで御社のコンテンツが勝手に翻訳されているようですが、これらも違法ですか?
集英社・弊社としては海外で紙媒体のコミックは販売していますが、電子書籍は販売していません。そのようなWebサイトがあることは認知していますが、対応しきれていないのが現実です……
困難を極める、海外での違法配信対応
これらのWebサイトやアプリは、紙媒体のコミックをスキャンしてデータ化し、Webサイトやアプリへアップしていると思われる。
Webサイトについては、まさにいたちごっこだ。過去に日本のマンガが読み放題だと紹介されている海外のWebサイトを探してみると、すでに閉鎖されていることが多い。
これらのサイト運営者は、警告を受けたり、危険を感じるとWebサイトをいったん閉鎖し、すぐに別のサイトを立ち上げて、そこでまた無料マンガの配信を始めるのだ。目的はもちろん広告収入だ。
電子書籍のDRMに対する取り組みや、無断でコンテンツを販売したり、配信する違法行為に対しては国内では監視している旨は、昨日の下記エントリーで書いたが、海外でのこうした違法行為を防ぐのは想像以上に大変だ。
日本では最大手の出版社でも、従業員数は1000人程度で、中小企業の規模だから、海外で訴訟を起こすのも体制やコストを考えると難しい。危険を感じたら、こうしたWebサイトはすぐに閉鎖され、サイトのドメインを変更して同じ行為を繰り返す。
出版社単独で対応するには無理があるので、近年では「コンテンツ海外流通促進機構」(以下、CODA)という、海外における海賊版対策を行う一般社団法人も立ち上げられている。
この組織は、経済産業省及び文化庁の呼びかけにより、発足したものだ。
CODAは、2017年2月に中国四川省で、日本の漫画などをネット上で違法に配信したとして、現地の裁判所で著作権侵害罪で中国人の男3人に対し、有罪判決を勝ち取っている。
CODAが中国警察当局からデータの提供を受け、違法配信の作品数を調べた。日本の出版社5社から使用を許諾していないとの確認を取り、中国警察当局に通知した。
単独で日本の企業が中国警察当局と連携をとるには高い高いハードルがあることを考えると、CODAの勝訴は快挙ともいえる。しかし実際には、このような違法Webサイトが複数あり、あくまで見せしめ的な逮捕に過ぎない。
根本的な解決には程遠く、所詮はいたちごっこ状態なのである。