読む価値があるかどうか
箱根駅伝3連覇という偉業を成し遂げた原晋監督(青山学院大学)の書籍を読みました。
Amazonで評価が高かった(星4以上)ので期待して読んでみたのですが、残念ながら読後にずしりと胸に残るような本ではなかったです。
しかしこれは原監督の責任ではなく、出版社側の本の作り方に問題を感じました。
この本は原監督が自分で書いた本ではありません。ゴーストライターが、原監督に関する様々な雑誌や書籍から良いところを抜き出して1~2ページ単位でエピソードをちょちょっとまとめた形です。
各章初めに原監督が哲学を2~4ページ程度で語るコーナーがあるのですが、本書を制作するにあたってオリジナルの部分はそこだけかと思われます。
Amazonで評価が高いのは、むしろこういう本の方が読みやすいということかもしれません。原監督の組織運営や育成哲学がコンパクトに読みやすくまとまっていますから。
東洋経済の記事の方が読む価値がある
しかし、簡単に入ってくるものって、簡単に出ていくんですよね。
この本はまさにそう。
とても軽い内容であると同時に、なぜ原監督が駅伝チームの作り方や、個人の選手に対する指導でそういった考え方に至ったかについて、深掘りはしていないので、読後に何も印象に残らない。
本書に掲載されている内容だと、インターネットに落ちている彼の雑誌インタビューと変わりません。
いやむしろ下記記事の方が、原監督の組織論について深く迫っています。実際。
この内容ならインターネットで十分
ただし、こういった本の需要もあると思うので、完全否定はしません。
ただ私のように出版社で本を作ってきた側の人間からすると「手抜きの本だな」とがっかりしてしまうのです。
私も手抜きの本を作った経験があるので出版社や編集者を責める気持ちはないのですが、いち読者として残念でした。
「勝利への哲学157」というタイトルも、「157」というてきとうな数字をタイトルにくっつけて少しキャッチーになっていますよね。こうした数字をくっつけることによって、読者に対して「手軽に読める」「良いところをまとめました」というイメージを与えられる。
「コストをかけないで、売れる本ができたらいいな」という出版社や編集者の思いが透けて見えるのがつらいです。
エッセンスをまとめるだけなら、無料のインターネットの大手サイト「NAVER まとめ」と何ら変わらないし、せっかく書籍として一冊の内容を通して読む体験が読書の良いところなので、原監督の考えをもっと深く、正確に理解したかったというのがいち読者としての感想です。
辛口になってしまいますが、こういった本は、読んでもあまり意味がないです。私が原監督のインタビュー記事などを過去にけっこう読んでいたというのがこうした評価につながっていますが、本人が書いてないばかりか、本人にまともに取材もしていないので、目新しい情報もなく、読んだ前と読んだ後で、私の内面に何も変化は起こりませんでした。