2017年8月に米国の宝くじ「パワーボール」で巨額賞金の当選者が出て話題になりました。
マサチューセッツ州に住む女性(53才)が1回の当選金として同国史上最高額となる7億5870万ドル(約830億円)を当てたのです。
この女性は当選したことがわかると、すぐさま勤務先に電話し「もう職場には戻らない」と伝えたといいます。
このあっさりとした判断に賛否両論ありますが、まあ……辞めますよね。
会社で働くことが嫌いじゃないにしても、それだけのお金があれば普通の人とは異なる経験が得られるチャンスですから。
それよりも興味をひかれたのが、この女性が巨額賞金の受け取りを全額保証の「分割払い」ではなく、あえて減額されてしまう「一括払い」を選択したことです。
ジャックポット当選金額の支払いは30年間の分割払いか、もしくは一括払いを選ぶことができます。
分割払いだと賞金全額の830億円が保証されますが、一括払いだと税金が引かれてしまい、最終的な受取金額は約370億円(約3億3635万ドル)まで減額してしまいます。
賞金が半額以上に減額されてしまうのです。
当選者の彼女が「一括払い」を選択したことで日本国内でも物議を醸したわけです。
9月3日に放送されたフジテレビ「ワイドナショー」でも、ゲストの宮澤エマさんが「確実に幸せと狙いに行くなら、30年分割だと思う」と語っていました。
ツイッターでも同様の意見が目立っていましたね。
とりあえずパワーボールは一括で貰うとすげえ損な気がする。
— mmm (@tacobue) 2017年8月25日
分割だと税金が引かれてしまうことに驚く人も。
日本ではないシステムですからね。
パワーボールの当選金830億
— 夜風 (@yokazeni) 2017年8月25日
一括で受け取ると
500億近い税金取られる事に驚き
こんなアンケートをとった人も。
アメリカの宝くじ、パワーボールで600億円が当たりました。受け取り方法が「満額で30年分割」と「半額で一括」があるそうです。みなさんなら、どっち??
— ボストンクラブ (@ga934wjsa) 2016年1月20日
このアンケートではあまりにも回答のサンプル数が少ないので鵜呑みにはできませんが、分割派が多数を占めていますね。
投資の観点では分割払いが賢明
単純な投資の観点でいうと、分割払いを選ぶべきでしょう。
その方が手取りの総額が大きいからです。
目先の利益を重視するのは投資の世界では愚か者の選択です。
けれども、もし私が当選者の彼女の立場なら、同じように一括払いを選んだでしょう。
なぜなら「ワイドナショー」での宮澤エマさんの「確実に幸せと狙いに行くなら、30年分割だと思う」というコメントにある「確実に」の部分を私は信じていないからです。
もしかしたらこの宝くじ(パワーボール)の運営元である、全米宝くじ協会が経営破たんする可能性だってあります。
「そんなことあるわけないでしょう」と思うかもしれませんが、誰が30年間の長期間の支払いにおいて「間違いなく支払われる」と断言できるでしょうか。
国家レベルでの破綻も珍しくはない
国や州レベルであっても、「絶対の保証」などありません。
例えば2008年のリーマン・ショックでは、米国企業のGMやフォードが深刻な経営不振となり、その影響で自動車の街と呼ばれていた米国のデトロイト市は経済的に破綻してしまいました。
この結果、デトロイト市の職員はすでに引退した人も含めて、約束されていた年金額が大幅に削られてしまったのです。
州のような信頼性の高い組織であっても、平気でこういった事態に陥ります。
もちろん国という単位に広げても変わりません。
1980年以降だけでも、アルゼンチン、ロシア、チリ、ドミニカなど10ヶ国以上でデフォルトが発生し、国家破綻に陥っています。
デフォルトとは国家レベルの自己破産のことですが、これは珍しいことではありません。
そしていったんデフォルトしてしまうと、国債の利息の支払いは停止され、元本も戻ってこない可能性があります。
国単位でもそうした状況に陥るのですから、宝くじなんて、たとえ当選者と運営元で契約書が存在し、支払いが約束されても、確実に支払われる保証なんてどこにもないのです。
死亡リスクを考慮すると一括払いのメリットは大きい
また当選者の女性は現在53才とのことで、30年間におよぶ分割だと、その過程で病気や事故で死亡してしまうリスクもあります。
本人が死亡した後は、分割の支払いが止まってしまい、家族も受け取ることができないとの情報もあり、これが本当なら死亡リスクを考えると一括払いの方が受取額が大きくなる可能性もあります。
最終的には本人の考え方次第ですが、リスクとリターンを材料を出して考えてみると、「確実に幸せと狙いに行くなら、30年分割」とは言えません。
さて、あなたなら一括払いと分割払いどちらを選びますか?