会社員が生涯で会議に費やす時間は「3万時間」。
1日10時間活動するとして、約8年分の年月を会議に費やしていることなる。
『世界で一番やさしい会議の教科書』(日経BP社)という書籍で、コンサルタントである著者の榊巻亮氏は、上記のように述べている。
この数字がどのように算出されたのかはわからないが、私個人のスケジュールを見ても、平日は午前と午後に毎日のように会議が入っており、かなりの時間を会議に費やしているという実感がある。
多くの会社勤めの人も同じような状況ではないだろうか。
会議というのはやっかいなもので、仕事を頑張れば頑張るほど増えていく。
自分のスキルや役職が上がるにつれて、呼ばれる会議が増えていくのだ。
不毛な会議を劇的に改善させる6つのルール
私はアクセンチュアなどの外資系企業や合理化を推し進めるIT企業などの社外の人間と、1年以上にわたって毎週のようにプロジェクト会議をしていた時期がある。
これにより彼らの会議の進行方法を直に学ぶことができた。
また私自身、不毛な会議に嫌気がさして会議進行に関する書籍を何冊も読んで、少しずつ改善を積み重ねてきた。
これらの経験から下記の6つのルールを重視することで、不毛な会議が劇的に変わった。会議を終えた後に「有益な時間だったな」という充実感を得られるように変わっていった。
皆さんにもこのルールをぜひ共有したい。
1. 参加人数を絞る
「……(はぁ、しかし無駄な時間だな。はやくこの会議終わらないかな)」
会議で一方的に持論を展開する参加者がいる一方で、上記のように会議の終了を待っている参加者もいるものだ。
発言をしない理由としては、議題が自分の仕事とは関係ないため、会議の内容が理解できなかったり、疑問や課題が思い浮かばないことが多い。
いずれにしても、当事者意識が欠けていることが原因だ。
発言しない人は一見、無害のように見えて、会議の雰囲気を大きく損ねている。無言で座っているだけで有害な存在になってしまうのだ。
これを避けるためには、参加者の人数を絞るべきだ。
「あの人も会議のメンバーに入れておこう」とか「一応営業部の人間も参加してもらい、コンセンサスを得ておこう」などとやっていると、とたんに会議の参加人数は膨れ上がる。
発言する人が多ければ多いで、意見が拡散されてしまいし、一方で発言する人が少ないと、先ほど説明したように会議の雰囲気が悪くなってしまうのだ。
そのため「この人がいないと会議が成り立たず困る」という人のみを招集する。当事者のみで会議を開催すると誰もが意見を述べるし、結論も出やすくなる。
2. 会議の目的を冒頭に確認・共有する
「会議の目的を冒頭に確認・共有する」ことは特に大事なことだ。
油断すると、会議というには、ふぁっと入ってしまうものだ。
例えば、前回から引き続きの会議として設定されている場合には、会議の目的を最初に確認しておかないと、いったい何をどのように決めるのかが、不明でちぐはぐなスタートとなってしまう。
参加者によって会議の目的をバラバラに設定していると、最後まで必要な結論に至らずに、「ではまた次回」などと解散することになる。まったく不毛な時間だ。
これを防ぐには、会議の進行役が、しっかりと会議の目的を冒頭に確認・共有するのが良い。
もし会議の進行役が会議の目的を決めようとしない場合は、あなたが会議冒頭で「ところで、この会議では何を決めれば良いのでしょうか?」とツッコんで、その場で目的を決めると良い。
3. 話が脱線したらすぐに戻す
いざ目的が共有されたら、会議は進行しやすい。
会議が無駄な時間に感じられてしまう要因の一つとして、声の大きい役員クラスの人間が、本題とは別の課題に対して、「あれはどうなっていたんだ?」などと担当者に確認を始めてしまうことにある。
他の参加者にとってはどうでもいいことに対して、その役員と担当者の二人で会話をし始めてしまう。これも本当に無駄な時間だ。
これを防ぐ手段としては、話が脱線したら本題にすぐに戻すように促すことだ。
自分が会議の進行役であれば、
「その話は、いまこの場で進めますか? 終了時間もけっこう迫ってきていますが」
と上から目線にならないように促すと良い。
自分の発言に酔っていた役員も暴君でなければ、
「それじゃ、この話はまた別の機会にしよう」
などと応じてくれるはずだ。
自分が進行役であればこのように修正しやすいが、別の人間が進行役だと往々にして、その役員と担当者のやり取りをボーっと見つめていることがある。
その場合は、しゃしゃり出る感じにはなってしまうが、
「すいません、会議の後に予定が入っているので、先に本題を片付けませんか」
と指摘すると良い。
4. 議題ごとに時間を絞る
会議をだらだらと進行していると、気づいたら会議時間が延びてしまうことがよくある。
会議が延びても誰も文句を言わないようだと、その会社はヤバい状態だと思った方がいい。相当な時間を無駄にしている。
私が以前、アクセンチュアなどの外資系企業やIT企業の社外の人間と会議を重ねていたときは、必ず、会議の前に当日の議題(アジェンダ)が知らされた。
例えば以下のような内容だ。
1) 会議の目的と前回会議のおさらい (10:00-10:10)
2) 各課題の状況確認 (10:10-10:40)
3) スケジュールの進捗確認(10:40-10:50)
4) 次回の議題と宿題の確認 (10:50-11:00)
このように時間が指定されていると、会議に遅刻しないように意識するものだし、仮に、1)や2)で時間がかかってしまっても、参加者全員が時間がおしていることを共有できるので、おのずと修正する気持ちが生じる。
3)4)の部分で時間を取り戻すべく、的確かつ素早く進行していくことで、会議の時間が大幅に延びるという事態を防ぐことができる。
5. 宿題と次回会議の議題を決める
会議の冒頭で、会議の目的を参加者で共有するのも大事だが、これと同じくらい重要なのが、「宿題と次回会議の議題を決める」ことだ。
宿題とは、会議の中で課題に対して、誰が、いつまでに、何をするのかを明確にすることだ。
必ず議事録に書いておき、会議が終わったとにメールで流して、参加者全員で共有すると良い。
そうすると、担当者は自分の宿題を強く意識することになるので、次回会議で、「忙しくて何もやっていませんでした」というゼロ回答は少なくともなくなるだろう。
またその宿題をもとに、次回会議で何をどこまで決めるのかまで、踏み込めたら、次回の会議がスムーズになる。
特に議題のない集まることが目的化した定例ミーティングも、会社組織では存在しがちだが、その会議で出た課題に対して、次の会議までにどのように対応するか、次回定例ミーティングでその結果についてどう話し合うかを決めておくと、無駄な会議がとたんに有益な会議になることがある。
6. 必ずA4資料1枚を配布する
最後に紹介するのが、会議では「必ずA4資料1枚を配布する」というものだ。
何も資料がない会議というのも存在するが、これまで説明してきた、会議の目的やアジェンダを1枚にまとめて、それを印刷して参加者に配布すると良い。
資料が何枚も及ぶようだと、参加者が扱いづらくなるので、無駄を省き、A4資料1枚にまとめる。
これがあるだけで、会議の進行がスムーズになる。
あくまで一例だが、下記に資料のモデルを掲載しておく。
上記のように空欄を設けておくと、視覚的にも「この空欄をみんなで埋めていく」という意識が生まれてくるので効果的だ。
実践しないと何も変わらない
以上が、不毛な会議を劇的に変化させる6つのルールだ。
会議を効率化させるためには、何もよりも実践できるかどうかが肝となる。
「なるほどね」で終わらせてしまってはもったいない。
ぜひ明日の会議から採用してみていただきたい。
また私は会議の改善がテーマの書籍も何冊も読んできたが、下記の書籍は会議改革を実践させることをテーマに執筆されており、今回紹介したルールにも大きく影響を受けている。
興味があれば読んでいただきたい。