週末5分間 英語クラブ byコツログ

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【書評】ギャンブルで100億円負けた大王製紙元会長が獄中で考えたこと

この書籍、2017年1月に文庫版が出版されたと聞いた時からずっと読みたかった本でした。
読みたい本が渋滞していた状態だったのですが、ついに今週から読み始めて、今朝の通勤電車で読み終えました。

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これから読もうという人もいるので、不必要に期待値を上げるべきではないですが、本書はなかなかの読みごたえがある一冊です。

著者は大王製紙という東証1部上場の社長でありながら、会社の金を使ってギャンブルに狂い、最終的に100億円以上負けてしまいます。結局、部下の告発で事件は明るみになります。

マスメディアにも大々的に報道され、著者自身はもちろん、創業家の一員である父と弟まで大王製紙の取締役の辞任に追い込まれ、文字通り地位や名声のすべてを失ってしまいます。

ここまでの事実は、本書を読む前から2011年に週刊誌やテレビの報道で私も知っていました。
ただし、本書が出版されたと聞いた時に、私はなぜこの人がこんなにギャンブルにハマってしまい、そして100億円というこれまで聞いたこともない途方もない額の借金を背負ってしまったのか、興味が湧きました。

30時間以上も食事もとらずにぶっつづけでギャンブル

著書ではすさまじいほどのギャンブル生活について執筆されています。毎週のように金曜の夜から日本を出発し、シンガポールやマカオのカジノに入り浸る週末を送ります。そして30時間以上も食事もとらずにぶっつづけでギャンブルに興じ、月曜の朝に間に合うように帰ってくるという日々を繰り返すのです

当然ですが、カジノでは負けが嵩みます。一般の感覚では不思議なのですが、著者はたとえ勝っても勝ち逃げしないのです。とにかく大金を狙いに、時間のある限り、ギャンブルを続けてしまうのです。完璧に中毒ですね。

その証拠に事件が明るみになった後に、病院を訪れますが、そこで精神科医からも抑うつ症や依存症の病気だと診断されています。

そして勝ち逃げしないので、お金がなくなるまで勝負します。そして結果、借金だけが積み上がります。すると、毎週のように自身が社長を務めていて、株を半数以上取得している子会社の経理担当者へ連絡を取り、てきとうな理由をつけては、数億円ずつ調達するということを続けます。

事実は小説よりも奇なり

この堕ちていく感覚がたまりません。もちろんノンフィクションですが、「事実は小説よりも奇なり」を地で行っています。

Amazonのカスタマーレビューでは「懲りない」とか「反省していない」など叩かれていますが、書籍を読んでいくと、割と短期間で借金自体は100億円すべて返済していることがわかります

そのため本人としては実刑を受けるほどの罪だとは感じていないようで、裁判に不服な様子が文章からぷんぷん漂ってきます。

反省の言葉は随所に記載されていますが、獄中では刑期を終えた後のビジネスのことを考えていた記述もあり、この切り替えの速さは一般人の感覚ではないですね。普通なら「もう人生終わったな」とくよくよしそうなものですが。

そのため著者が「反省していない!」と批判されるのもわかりますが、その一方で100億円の借金を返せる人間なんて、この世の中にほとんどいないので、私は素直に感心しました。

4年の実刑がくだされたのですが、情状酌量の余地はあったかもしれません。世間からの誹謗中傷や家族もろとも取締役を辞任に追い込まれるなど社会的な制裁も受けていますので。

ただし事件当時は大企業の現役の会長だったので、社会的な影響が大きいことが実刑という判断になったようです。

社員や家族に謝罪の言葉がないのが違和感

著者は実の父親や弟、さらには資金を融通させた関係者に対しては謝罪していますが、一般社員に対しては謝罪の文言が見当たりません。この事件は、当時かなり騒がれましたし、社員は家族や取引先に対して嫌な思いをしたと容易に想像できますが、これに対してはっきりとした謝罪の言葉がなく、私は違和感を感じました。

また著者の奥さんや2人の子どもたちに対しても謝罪はありません。奥さんとはもしかしたら離婚していたのかもしれませんが、事件当時、子どもたちは学生時代の多感な時期だったことから、色々と大変だったと思うのですが。

本書では著者が平日から毎日のように銀座や麻布で飲み歩く様子が描かれており、さらに週末はずっとカジノという生活なので、ほとんど家族との時間はとれていないようでした。となると、家族関係は事件前にすでに破綻していたのかもしれません。

まさに華麗なる一族の一員

事件とは直接関係ありませんが、本書では、著者の生い立ちや学生生活から社長になるまでの生活についても執筆されています。

その様子はまさに華麗なる一族の一員といったものです。

一部例をあげるだけでも、東京大学へ入学した褒美として1,000万円超のBMWを買ってもらったり、大学時代から銀座のクラブに出入りし他の企業の大幹部に可愛がられるなど、派手で贅沢な生活は学生時代から始まっています。

私の大学時代なんて、小銭だけ持って原付きに乗り、大学の食堂に向かう日々でしたから、こんなマンガみたいなボンボンって本当にいるんだなと。

社会人になってからも、企業の経営者たちや複数の芸能人とクラブのVIPルームで飲み遊ぶ生活は続きますが、いくらお金持ちや資産家でも、なかなかこんなイメージ通りの放蕩生活を送っている人も少ないのではないでしょうか。

こういった大企業の創業家の一員である著者のリアルな生活を垣間見ることができるのも、本書の面白さですね。

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