転職でキャリアップしていく人は、「仕事ができる人」だけだと思ってあきらめていませんか?
私は2度の転職に成功し、年収は250万円から1,100万円へ大幅アップしました。しかし仕事はできません(自慢げに言うことではないですが)。
それでもキャリアアップは可能なのです。
スター編集者の先輩
前に勤めていた出版社にはいわゆる「スター編集者」の先輩がいました。その能力を誰もが認め、周囲から尊敬の眼差しを一身に受ける。普段はきびしい社長も一目置いており、他の社員とは扱い方が違う。そんな人でした。
何がすごいって担当書籍の売上が圧倒的に違う。右肩下がりの近年の出版業界では、3万~5万部売れただけでヒット商品だと言われます。
その先輩はそれまで会社が扱ってこなかったようなジャンルの書籍を企画したかと思ったら、何十回も増刷するようなヒット商品に仕上げ、さらにそれを横展開して姉妹本を企画し、シリーズ化を果たす。するとそのシリーズが数年後には20~30万部規模となり、会社の中でも主力商品の1つとして成長を遂げるという、すさまじいほどの「仕事ができる人」でした。
私も近くで一緒に仕事をしていましたが、この先輩が会社を辞めたら会社が傾くだろうなと思うほどの存在感でした。
部内で浮気をしようが結果を出せば許される世界
中小出版社はベンチャー企業と同様で、とにかく毎期利益を出すことに必至です。そういう状況で「仕事ができる人」とはダイレクトに売上と利益をつくることができる人です。
きれいなデザインされたエクセルやパワーポイントの資料なんてこれっぽっちも価値がない。遅刻をしたことがないことや、メールの返信の速さを仕事ができると勘違いできるような会社は、そもそも高いスキルの仕事なんか求められていない証拠です。
その業界で生き残るか、それとも倒産するかの瀬戸際にいるような企業は、真面目だけが取り柄の人を評価する余裕はありません。
とにかく売上と利益に直結する仕事が求められます。結果が出なければ、会社にその人の居場所はありません。
学生時代のように答えが教科書に書いていない世界で、素行が悪かろうが、部署内で浮気をしていようが、とにかく結果を出すことが求められ、結果さえ出せばすべてが許されるのです。
新進気鋭のベンチャー企業であるウーバー(配車サービス大手)で、社内でのセクハラが今ごろ問題視されていますが、ベンチャーや中小企業では結果さえ出せば良いという空気に支配されている会社は少なくないです。
自分は凡人だと気づいた時に発想を変える
一方で私は遅刻もしないし、きれいなプレゼン資料は作成できる。そしてセクハラ発言で訴えられたこともないけど、その他大勢の編集者と同様でさしたる実績のない一社員でした。
出版業界のように需要が枯渇していく斜陽産業では、従来通りに仕事していても商品は売れなくなります。そのため必死になって新しいジャンルの商品を作る必要があります。書籍がダメならWebマガジンで売上を立てる。Webマガジンがダメなら有料イベントで、有料イベントがダメなら……とどんどんアイデアを生み出し、形にして、売上に変えていくことを会社から求められる中で、私にはエネルギーとセンス、運のどれもが欠けていました。
20代後半はスター編集者を目指して、もがいて、もがいてを繰り返しす日々を送っていましたが、30代に突入してからは、自分の能力でも貢献できる、生き残れる会社に転職する方向へ切り替えました。
転職した途端、異色の人材として重宝されることも
大企業や、業界トップの比較的事業が安定している中小企業では、イノベーションよりもソフィスティケート(洗練)された人物が求められます。
いくら営業成績が良くても遅刻を繰り返したり、セクハラ発言するような人物は、敬遠されます。そして社員ひとりひとりに役割が与えられ、それを着実にこなしていくことで、複雑で巨大な組織が、ゆっくりと前に進んでいきます。
そのため今、中小企業で大きな結果が出せずに悩んでいる人も、無駄に悩むことはなく、大手企業に転職した方が、生き生きと活躍できる可能性があります。
そしてブラック企業でさんざん鍛えられた人材が、そうした大企業に移った途端、異色の人材として重宝されるケースは少なくないのです。
現に私も現在の会社の仕事で、前の会社の経験がとても役立っています。会社は世の中に1つだけではないので、自分は仕事ができないと決めつけずに、場所を変えてチャレンジするのも選択肢の1つだと思います。