転職活動を始めるならいま勤めている会社を辞めないでください。
私は最初の転職で200万円、二回目で300万円アップの転職に成功しました。その過程で重要視したのは、とにかく仕事を辞めずに活動していくということでした。
- 無職の状態で転職活動をしてはならない
- すごい勢いで貯蓄額が減っていく恐ろしさ
- 休むのはすべてが終わってから
- 余裕がある方が交渉の主導権を握る
- ジョブズのプレゼンは真似できないが……
- 割り切って有休を活用する
無職の状態で転職活動をしてはならない
転職活動で陥りやすい危険なワナの1つが、現在の仕事を辞めてしまい、無職の状態で転職活動を行うことです。
転職を考える人の中には、「残業が多すぎて疲弊している」とか「ほとんど休みが取れない」という理由も多いでしょう。現在の仕事が忙しすぎて転職活動を行う時間を確保できないし、精神的な余裕や気力もない状態。
そうなると現在の仕事を辞めてからでないと転職活動できないという結論になるのもよく理解できます。
しかし仕事を辞めるというのは致命的なリスクになり得ます。いったん仕事を辞めてしまうと、収入が途絶え、自らの選択肢を狭めてしまうことになります。「自分は多少の蓄えもあるし、大丈夫」と言う人が実に多いのですが、その思考ははっきり言って危険です。
すごい勢いで貯蓄額が減っていく恐ろしさ
経験ある人なら分かりますが、いざ収入が途絶えると日々の生活でものすごい勢いで貯蓄額が減っていきます。それまで貯蓄できていた人も、収入が途絶えたことで不可逆的に資産は右肩下がりになります。
実家暮らしならともかく、一人暮らしだったり、家族を養っている人は、それまでの同水準の生活を送ってしまうと、100万円が半年も経たずに蒸発します。節約するにも限度があります。家賃や光熱費、食費、保険などは必ず発生するので節約にも限界があるのです。
もちろんすぐに転職先が決まれば良いのですが、キャリアアップや年収アップを図ろうとするとどうしても競争率が高くなります。筆記試験や面接は相対評価で行われるので、自信を持って臨んだとしても自分より魅力的な人物がライバルにいた場合、落とされてしまいます。
休むのはすべてが終わってから
それで何社か落ちた後に、はじめて再就職の厳しさに気づいて焦り出すのです。
仕事辞めた後、失業保険の給付を2~3ヵ月は受けることができるでしょう。その期間にまずは旅行でもいってのんびりとしよう。これまであくせくと働いてきたんだ。自分に充電させてあげないと。なんてやっていると、あっという間に半年が過ぎてしまいます。
自己都合退職の場合は、失業保険の給付期間は90日(雇用保険の加入期間が10年未満の場合)ですが、これをあてにしてはいけない。旅行に行きたいなら、まずは転職に成功させて、現在の職場の退社日と次の会社の入社日を確定させます。その後にきっちりと有給休暇を消化し、その期間を利用して旅出ると良いでしょう。
余裕がある方が交渉の主導権を握る
単に生活費のことだけでなく、精神的な余裕のある・なしで、転職活動のパフォーマンスは大きく変わってきます。働きながらであれば、たとえ志望企業からお祈りメールを受け取っても、「また別の企業に応募しよう。落ちても最悪いまの会社で働いていけば良い」と割り切ることができます。
これが無職状態だと、なかなか転職先が決まらないことで徐々に焦り出し、精神的な余裕が失われていきます。
面接では自信たっぷりに自分をプレゼンする必要がありますが、受かりたいと思うほど、一生懸命になってしまう。面接官も「うわぁ。焦っているなぁ」と感じます。
人間同士のコミュニケーションでは相手よりも条件面で上回り、余裕がある方が交渉の主導権を握ることができます。これは面接でも同じで、焦っていることが相手に伝わると、その人の価値は低く判断されてしまいます。
ジョブズのプレゼンは真似できないが……
プレゼントの名手と言えば、米Apple社のカリスマ的リーダーだったスティーブ・ジョブズでしょう。
ジョブズはかつて同社から追い出された後、NeXT社というコンピュータの会社を設立しました。
しかし新商品に凝った仕様を求め膨大な時間をかけたことで、資金がほとんど底をつきます。会社が倒産しかけているという絶望的な状況で、持ち前のプレゼン力を活かして当座の資金を確保することに成功します。
1987年、ゼネラルモーターズで成功していたロス・ペローから2000万ドル(20億円)もの出資を引き出すことに成功したのです。この時のエピソードがすごい。
NeXT社の事業に将来性を感じたロス・ペローから投資に興味があるとジョブズに連絡がありました。資金がショート寸前だったスティーブ・ジョブズは内心では焦りまくっていましたが、それを見抜かれたら投資話は帳消しになってしまうでしょう。
そこで商談の日程をあえて一週間後に設定してロス・ペローを待たせました。当日、実際の商談では自信満々に自社の商品を紹介し、気難しい人間として知られていたロス・ペローから見事、多額の資金を引き出すことに成功したのです。結果的にはこの投資でロス・ペローは大損してしまうのですが、スティーブ・ジョブズのプレゼンにはそれほどの力があったのです。
我々はこのような土壇場でスティーブ・ジョブズほどのプレゼンはできませんが、事前準備でできるだけ余裕のある状態にもっていくことは可能です。
「こんなに優秀な人材が運よく自分の会社を受けてくれた」と相手に思われるには、「御社で働きたいけれど、残念ながら条件で折り合えなければ、別の企業に行きますね。それがお互いのためでしょうから」ぐらいの気持ちで臨みます。
もちろん優秀な人材だとその企業に印象付けるには、これまでのキャリアや自分が持っているスキルにも依存します。しかしたった1時間弱の面接でその人のすべてを理解することが誰に可能でしょうか。正しく理解できないのなら、その状況を逆手に取って、より優秀な自分にプレゼンによって仕立てることも可能なのです。
そのために必要なのが「精神的な余裕」なのです。面接では、無職の状態よりも「現場では責任者の立場でバリバリ働いている」という状態の方が、面接官にとっては魅力的に映ります。
割り切って有休を活用する
そうは言っても働きながらの転職活動は難しいという人もいるでしょう。転職活動では平日に筆記試験や面接を行う企業もあります。
その場合は有休をうまく活用するしかありません。面接場所が近いなら遅刻や早退で済みますが、遠方だったりすると、もうその日は会社を休むしかない。面接は二次、三次と続いていくので、複数社を同時に受けているとかなり頻繁になります。それだったら会社を辞めてから、集中して転職活動をしたい気持ちになりますね。
ただそれでも辞めてはいけません。多少周りに迷惑をかけてでも、有休をとりながら転職活動を続けるのです。プレッシャーはありますが、それでも会社を辞めてしまった後に襲ってくる金銭的、精神的なプレッシャーと比べれば軽いものです。
もしいま会社を辞めようと思っている人は、ぜひもう一度よく考えてみてください。