日経平均株価やTOPIXが上向くと、メディアは投資意欲を煽り出します。そしてその結果、初心者が株式投資に手を出してヤケドをしてしまうのです。
投資歴20年の私が断言しますが、株式投資をする際には「まず勝てない」と考えておきましょう。
株式投資で勝てる人
株式投資をはじめるほとんどの人は儲けた場合の想像を膨らませてトレードを開始するでしょう。私もそうでした。
私の父は大手証券会社に勤務しており、所属は投資運用部でした。金融業界の中でも投資に関してはプロ中のプロだと言えるでしょう。日々、何億もの資金を動かしていました。
そのため私も学生時代から投資に対しては抵抗がなく、その後勤めた出版社でも金融ネタを中心に扱ったことも追い風となって、たくさんの投資商品に手を出してきました。
しかし「では株式投資やFXに投資すべきですか?」と聞かれたら、「一般の方はまず止めておいた方が良い」と答えます。
私が考える「投資で勝てる人物」というのは下記の条件を満たした人です。
・金融業界のプロと同等レベルの金融リテラシーと
・投資経験&センスに溢れ、
・かつ資金もあり、
・かつ強運の持ち主
この条件を満たしていない方を一般人とすると、私も当然一般人の一人になります。
「こんな条件を満たしているヤツなんてそういるかっ!」って思うでしょう。その通りです。なかなかいません。ただし全くいないとまでは言えません。実際にごく少数ではあるものの満たしている人が存在します。ただし投資家の100人に、いや1000人に1人とかレベルではないでしょうか。
本エントリーのタイトルにある「99%は地獄を見る」という数字に根拠はなく、全くの印象に過ぎませんが、少数のトレーダーが他の投資家の分まで利益を根こそぎ獲得している世界であることは間違いないのです。
証券アナリストや経済評論家は勝負もしていない
ここだけの話ですが、私はかつてメディア業界で駆け出しだった際に、株式投資をテーマに扱った書籍でベストセラーを連発していた経済評論家に取材する機会がありました。その方に飲みに行って本音トークを聞いたことがあります。
私はインサイダー取引にならない範囲で株式投資をしていると思っていたので、話を振ったところ、「こんなこと公には言えないけど、投資はしていないだよね」という意外な返事が返ってきました。
本人曰く「いつか60歳過ぎて引退したら、じっくりと株式投資と向き合いたい」とのことでした。つまり仕事で株式投資についてコメントしたり、執筆しているのはあくまで仕事なので、そのような仕事に時間をとられている状態でトレードしてもそんな片手間では勝てる気がしないとそう言っていました。
この話を経済や投資関連を多く出版する会社(業界では「経済系出版社」なんて呼ばれますが)の編集者に伝えたことがありますが、「よくある話だよね」と特に驚くこともないリアクションでした。
そうなんです。こうした話は珍しいことではなく、むしろ経済評論家や証券エコノミストで積極的に投資をしている人はむしろ少数です。不動業に勤めている人の多くが不動産投資をしておらず、出版社に勤めている人がたいして読書をしていないのと同様に、金融業界で生活している人も積極的な株式投資をしている人はごく少数です。
つまり世間的にはプロだと思われている人でさえも、投資で大きな成績は残していない。世の中に出ている個別株向けの投資本をいくら読んだって株式投資に勝てるわけではないです。チャートの見方なんて一冊教科書的なものがあれば済む話なのに、多くの書籍でその焼き直しばかりしています。このような書籍にお金を払う価値はありません。
一部の天才は無視すべき
そんな人が書いた本をいくら読んだって勝てるようになるのは絶望的に難しいでしょう。いや実際に勝っている人が執筆した本を読んでも勝てやしない。
世界的に有名な登山家は実際に登山には成功しているでしょうけど、その登山家の本を読んだだけの素人では到底エベレストには登れません。頂上を制することができるのは、能力・経験・資金・運などの条件を満たしたプロのような人だけなのです。
私はこの結論にたどり着くまでに学生時代から数えて10年以上かかりました。儲けと損失を繰り返し、希望と落胆を行き来して、そして10年という時間が過ぎたときにようやく自分の能力が凡庸なものだと気づきました。自分自身で経験しないと理解できないことの1つが「投資の才能がない」という事実だったのです。
一口に株式投資といっても、デイトレードやシステムトレードなどたくさんのトレードにチャレンジしました。しかし勝てる手法など見つかりませんでした。「自分の才能のなさ」をひとしきり嘆いた後に現実を知りました。さびしいことですが、これはほとんどの投資家に当てはまることではないでしょうか。
いやいますよ、国内の個人投資家でもB・N・F氏やcis氏などのように数百億の財産を築いた天才は。しかし例外的な存在を例にして考えてもしょうがない。だからこそ気持ちを切り替えて個人の能力を必要としないインデックス投資にシフトすべきです。
投資は成功確率と再現性に注目する
インデックス投資についてはまた別に書きたいと思いますが、誰でも勝てる投資とは、
・統計的に勝率が高く、
・かつ低コストで利益がしっかりと手元に残る
というものです。
株式投資で成功すると、人によっては自分が何でもできる完全な存在になった「全能感」のようなものに包まれ、結局その後どこかで負けてしまいます。
2005年のITバブル当時、ネットやマネー誌で有名だった投資家にDAIBOUCHOU氏がいました。この方の経験を記事にしたNEWSポストセブンの「資産10億円からの凋落と復活」というエントリーがとても勉強になります。
資産10億円を達成したことが大きく話題になって、個人トレーダーの間でカリスマ的な存在になったのですが、しかしこの方もその後のライブドアショックやリーマンショックで地獄を見ます。私もこの方の銘柄をマネして購入していたので、一緒にめでたく損失を被ったのですが、これは完全に私の自己責任です。当時はともかく今は全く恨んでいません。
初心者の方で「自分なら株式投資で大儲けしたら、損する前に止めちゃうけどな」と考える人はいるでしょう。しかしこれは実はとても難しいことです。実際に儲けた経験をすると、「こんなに簡単に儲かるんだ」と感動します。興奮もします。次に負けるとは思いません。だって勝っているので。
それでどこかで負けちゃうのです。結局勝っていたのは上昇相場だったり、たまたま選んだ銘柄が上がっただけに過ぎない。重要なのは成功確率に加え、再現性です。一発勝ってもしょうがない。いかに生涯にわたって勝ちを積み上げていけるか、資産を増やしていけるかが重要と言えるでしょう。
年間の運用は現実的に5%
投資は1年間の運用で元手を5%~10%を増やすことができれば成功とされる世界です。長期間平均して5%というのは、そう簡単ではないですが、一般人でも運用していける可能性はあります。
30~40代の年収1000万円プレーヤーであれば、運用資金は2000万円程度あるとして、年5%で運用すると100万円の収益になります。 けっして小さな額ではありません。この額に加えて給料から貯金をまわして再投資していくことで複利効果が高まります。つまり投資の天才でなくても投資で稼いでいくことは可能なのです。
このブログでは、30~40代の年収1000万円プレーヤーに対して現実的な資産運用や節税について今後も書いていきます。