週末5分間 英語クラブ byコツログ

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【書評】『結婚の嘘』はおそらく男性も読んだ方がいい1冊

柴門ふみの『結婚の嘘』という本が女性にウケていると聞いて興味が湧き、読んでみました。

有名な人なので説明は不要かもしれませんが、柴門ふみという人は漫画家で大ヒットドラマ『東京ラブストーリー』の原作者です。恋愛をテーマに数々のヒット作を生み出し、その活動は漫画だけに留まらず、エッセイストとしても地位を確立しています。
今回紹介する『結婚の嘘』も漫画ではなくエッセイです。

この人の旦那さんは同じく漫画家で『課長島耕作』の作者の弘兼憲史です。旦那さんの方が有名かもしれませんね。夫婦揃って売れっ子なので、世帯収入はおそらくすごいことになっています。

理想的な夫婦にも見えるが……

ただ私が注目してしまうのは、二人が出会ったのが、売れてからではなく、売れる前からであるという点なんですね。

柴門ふみはお茶の水女子大学の在学中時に弘兼憲史の駆け出し時代のアシスタントをします。柴門が大学を卒業後、すぐに二人は結婚をしますが、ここから二人ともそれぞれ漫画家として日本を代表するレベルまで上り詰めちゃいます。

夫婦二人が結婚した時点でほとんど無名の状態で、それからどちらも別々に超売れっ子になっているケースって漫画界に限らず、芸能、スポーツの分野まで広げてみても、あまり思いつかないですが。
そのような意味でかなり稀な夫婦でしょうね。

夫の休日は年3日だけ

そんなスーパーな夫婦であるにもかかわらず、柴門ふみは自分が長年夫婦関係に悩んでいたことを本書で告白しています。弘兼が生粋の仕事人間で、家庭をほとんど顧みなかったからです。

弘兼の休日は年に3日間だけで正月しか家におらず、他の家庭のように夫として家族旅行を計画したこともなかったといいます。というか、子どもに対して強い愛情を持ち合わせてなかったのが、柴門ふみの一番の不満でした。子どもは二人いるのですが、弘兼は第一子を産む前から子どもを作ることに対して消極的だったことが本書で語られています。

本の内容は夫に対する愚痴

さらにやっかいなのが、弘兼は人間として決して冷たいわけではなく、誰に対しても正直かつ丁寧に接し、常に明るい人柄だということ。第三者から見たら悪い人ではないのです。

ただし自分自身、父親に相手にされていなかったようで、子どもに対して時間を作らないことに罪悪感がなく、とにかく仕事優先の毎日を送ってきたということなんです。

柴門ふみは「子ども命」の人なので、この弘兼の態度が理解できない。本書ではその苦悩が、愚痴のような形で語られます。夫に何らかの不満を持っている主婦はわんさかいるので、こういう本はウケがいいでしょうね。

私は以前、弘兼さんと仕事をしたことがあります

実は私は弘兼さん(いきなり「さん」づけ)と一年間くらい一緒に仕事をしたことがあります。シニア層をターゲットにした男性月刊誌の連載を弘兼さんに依頼していました。漫画ではなく、活字の原稿でしたが、とにかく一度も締め切りを送れたことはありませんでした。

弘兼さんに秘書はおらず、当時はご本人からFAXで原稿をいただいていましたが、多忙にもかかわらず、締切日に必ず原稿を毎回送っていただきました。

けっこう嬉しかったのはそのFAXの送付状の部分に「北斗さん(仮名)、よろしくお願いします」というようなコメントとともにご自身の似顔絵が描かれていたことでした。

ささっと描いた本人の似顔絵ひとつであっても、編集者としては売れっ子の漫画家が自分だけに向けて描いてもらった絵なので、嬉しくないわけがありません。締め切りを守りつつもこういう気遣いができる人なのですから、そりゃ仕事は途切れないわけです。「また一緒に仕事したいな」と出版社の人間はそう思いますし、実際に作品も売れるのだから文句の出しようがない。

とは言っても、一番身近な奥さんが家庭を顧みない夫の態度にこれだけ不満や悩みを抱えており、それを著書という形で、公にすることに対して、弘兼さんご本人がどう感じているのか気になるところです。著書では「弘兼はどこまでも能天気なのでもうあきらめている」というような記載もありますが。

仕事と家庭のどちらを優先すべきか

仕事が好きで好きでたまらなく、仕事中心に生きる姿勢は、尊敬に価しますが、一方で仕事を優先に家族を犠牲にするという考えは現代社会では受け入れがたい価値観ですね。いまは家庭を大事にする「良いパパ」であることが当たり前に求められる時代ですからね。団塊の世代の中には弘兼さんのように理解できない、というか理解しようとしない人もいるかもしれませんが。

実際に弘兼さんは雑誌「SAPIO」(2015年2月号)のコラムで仕事よりも育児を優先するイクメンにダメ出しして、炎上した過去がありますが、考えは全く変わっていないと思います。

news.careerconnection.jp

いずれにせよ、本書は夫に対する不満をテーマにしながらも、ユーモアも交えて軽快に執筆されたエッセイなのでさくさく読めます。私のように男性が読んでも女性側(奥さん側)の目線を知ることができるので、読んでも損はないかなというのが読後の感想です。